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2023年12月1日から「PEEK冠」という奥歯の白い歯が新しく保険適用となりました。これまでは保険適用外だった前から7・8番目の歯まで、白い人工歯で治療できることになったため、保険診療で銀歯を選択する必要性も大きく低下したといえます。ここではそんなPEEK冠の特徴や従来の保険の白い歯との違いなどを谷塚駅前のハーツデンタルクリニックがわかりやすく説明します。

 

PEEK冠の特徴とメリット

 

PEEK冠の特徴とメリット

 

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で作られたPEEK冠は、保険診療で入れることができる白い歯です。とくに前から7番目(第二大臼歯)と8番目(第三大臼歯)にまで保険で白い歯を入れられるようになった点は、PEEK冠の大きなメリットといえるでしょう。つまり、PEEK冠の登場によって、すべての奥歯を保険で白く治療できるようになったといえます。

 

従来の白い歯(CAD/CAM冠)よりも優れている?

これまでも6番目(第一大臼歯)までは、保険の白い歯で治療することが可能でした。これを専門的にはCAD/CAM冠(キャドキャムカン)と呼び、一見すると新たに保険適用となったPEEK冠と同じように見えますが、原材料と材質が異なります。

 

まず、CAD/CAM冠は歯科用プラスチックであるレジンとセラミックで構成された材料を使用するため、強い圧力によって割れるリスクがやや高いのですが、プラスチックのみで構成されたPEEK冠はたわみやすく見た目の美しさに欠けるのですが、逆に破折しにくいというメリットがあります。それは補綴物としての強度を高めることに直結するからです。PEEK冠には「歯を削る量を少なくできる」というメリットもあります。

 

すべての部位を保険の白い歯で治療可能に!

すべての部位を保険の白い歯で治療可能に!

 

今回、PEEK冠が新しく保険適用されたことで、親知らずを含めたすべての歯を保険の白い歯で治療できるようになりました。これは歯科治療においてとても画期的なことなので、皆さんもその変更点を正確に理解しておくようにしましょう。

 

そもそもPEEK冠とは?

多くの人はまず「PEEK冠」という名前を初めて耳にするかと思います。PEEK冠とは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で作られた被せ物です。ざっくり説明するとプラスチックで作られた被せ物なので、従来から保険適用されている「CAD/CAM冠」とは原材料が異なります。そのためいくつかの点で性質も異なりますのでご注意ください。

 

少しややこしいのですが、PEEK冠もCAD/CAM冠と同じように、「CAD/CAM」というシステムを使って製作します。ですから、素材に違いがあるという点は、正しく理解しておいてください。

 

PEEK冠のメリット・デメリット

 

従来のCAD/CAM冠と比較した場合、PEEK冠には次に挙げるようなメリットとデメリットが見られます。

 

メリット

7・8番にも適応できる

PEEK冠の最大のメリットは、第一大臼歯である6番だけでなく、第二大臼歯(7番)と第三大臼歯(8番)にも使えるという点です。従来の保険のルールでは、特別な理由がない限り、7番と8番の被せ物は銀歯で作らなければなりませんでした。それがPEEK冠に保険が適用されたことで、すべての部位を白い歯で治療できるようになったのです。

たわみやすくて破折しにくい

従来のCAD/CAM冠は、レジンとセラミックの混合材料で作られているため、強い圧力がかかると割れてしまうことありました。PEEK冠はプラスチック材料で作られていることから、たわみやすく割れにくいという性質があります。その結果、装置の寿命も長くなりやすいというメリットが得られます。

 

歯を削る量が少ない

たわみやすくて破折しにくいということは、従来のCAD/CAM冠よりも薄く作れることを意味します。歯を削る量も少なく済むため、天然歯にやさしい歯科材料といえるでしょう。

 

デメリット

審美性に劣る

PEEK冠の材料となるPEEKブロックは、アイボリー色をしています。現物を見るとわかりますが、従来のCAD/CAM冠よりも色がやや不自然です。奥歯はもともと目立ちにくい部位なので、それほど気にならないという方もいらっしゃるかと思いますが、審美面においては従来のCAD/CAM冠より劣ります。

 

摩耗や変色が起こりやすい

従来のCAD/CAM冠もどちらかというとプラスチック材料に近いのですが、PEEK冠と比較した場合は、安定性にやや優れているといえます。そのため完全なプラスチックともいえるPEEK冠は、従来のCAD/CAM冠よりも経年的な摩耗や変色が起こりやすくなっているのです。

 

これでもう自由診療を選ぶ必要はない?

これでもう自由診療を選ぶ必要はない?

 

これまでは、7~8番を銀歯ではなく白い歯で治療する場合、自由診療を選択しなければなりませんでした。保険診療と自由診療とでは、実際に支払う医療費の額が大きく異なるため、泣く泣く銀歯を選んでいた方もいらっしゃることでしょう。そういう意味では奥歯の被せ物治療で自由診療を選択する機会は間違いなく減少することでしょう。

 

ただし、PEEK冠や従来のCAD/CAM冠は、歯科用プラスチックであるレジンをベースに作られた被せ物です。自由診療で作ることができるセラミッククラウンとは、さまざまな点で異なることを忘れてはいけません。そこで保険診療の白い奥歯と自由診療のセラミッククラウンとの違いについても後段で簡単に説明しておきます。

 

保険の白い奥歯とセラミッククラウンの違い

 

保険の白い奥歯とセラミッククラウンには、次に挙げるような違いが見られます。

 

違い1:審美性

保険の白い奥歯は、ブロック状の材料を削り出す形で作られるため、色調が均一です。とくにPEEK冠はアイボリー色をしているため、天然歯の色調や光沢、透明感を忠実に再現できるセラミッククラウンと比較すると審美性に劣ります。

 

違い2:耐久性

上でも説明したように、PEEK冠やCAD/CAM冠は主にプラスチックで構成されており、経年的な摩耗や変色が起こりやすいです。セラミックは安定性や耐久性に優れた材料なので、長い期間使用しても劣化しにくいといえます。経年的な劣化は、見た目を悪くするだけでなく、噛み合わせにも悪い変化をもたらします。

 

違い3:適合性

プラスチック製の被せ物は、セラミック製の被せ物よりも歯質との適合が悪いです。細菌が侵入する隙間が生じやすいことから、虫歯の再発リスクはセラミッククラウンより高くなっています。

 

PEEK冠の耐久性と安全性、リスクについて

 

PEEK冠の耐久性と安全性、リスクについて

 

上段で述べたように、PEEK冠はプラスチックのみで構成された被せ物なので、セラミックが混ざったCAD/CAM冠よりも強度や耐久性に優れているといえます。ただ、プラスチックは標準的なセラミックと比較すると耐久性や安定性に劣ることから、経年的な摩耗や変色、劣化などが起こりやすい点に注意が必要です。

 

安全性においては、金属アレルギーのリスクはありませんし、適度にやわらかいので、噛み合う歯を傷めるおそれもほとんどないです。歯質との適合性は、セラミックほど高くはないことから、虫歯の再発リスクはやや高くなっています。

 

また、PEEK冠でアイボリー色をしたPEEKブロックを使用するため、標準的なセラミックはもちろん、保険診療のCAD/CAM冠よりも審美障害が出やすいというリスクを伴います。ですから、審美障害のリスクをできるだけ減らしたい、残った歯と自然に調和する白い歯を入れたいという方は、PEEK冠ではなくセラミッククラウンが推奨されます。自費診療のセラミッククラウンなら、審美障害が生じるリスクを最小限に抑えられることでしょう。

 

PEEK冠の施術過程と注意点について

 

PEEK冠の施術過程は、従来のCAD/CAM冠と大きな差はありません。まずは歯を削ってPEEK冠に合った形に整えます。その上で歯型取りを行ってスキャンをし、そのデータをCAD/CAMに入力してPEEK冠の設計・製作を進めていきます。PEEKブロックはミリングマシンを使ってクラウンの形に削り出します。

 

PEEK冠の施術過程において注意すべきは、色調の調整が困難である点です。PEEK冠は、アイボリー色をしたPEEKブロックを削り出す形で製作するため、患者さんそれぞれの歯の色に調整することが難しいです。基本的には「A1相当のアイボリー色」の被せ物が出来上がるものと理解しておく必要があります。ただ、PEEK冠が適応されるのは奥歯なので、それほど厳密な色の調整も必要ないことも確かです。

 

PEEK冠の保険適用条件や範囲について

 

PEEK冠の保険適用条件や範囲について

 

PEEK冠の保険適用の条件は、全部金属冠と同じです。保持力に十分な歯冠高径があり、過度な咬合圧が加わらないことが条件となります。PEEK冠の適応範囲は、第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯とった奥歯です。

 

これまでも同じような被せ物治療にCAD/CAM冠というものがありましたが、適応範囲が一部の例を除いて第一大臼歯までに限られていたため、PEEK冠の保険適用は極めて意義の大きいことといえます。なぜならPEEK冠の登場によってすべての歯を保険の白い歯に治療できるようになったからです。もちろん、PEEK冠はCAD/CAM冠とは異なる特徴やメリット・デメリットを有していますが、それでも7番目や8番目の歯を銀歯ではない白い歯で補えるようになったことは患者さんにとって有益といえます。

 

PEEK冠のデザインと見た目について

 

PEEK冠は、保険内で治療できる白い歯ですが、デザインや見た目という観点においては、欠点も目立ちます。とくに自費診療のジルコニアやセラミックと比較した場合は、審美性に大きく劣るため、過剰に期待しすぎるのも良くありません。

 

例えば、自費診療で使えるオールセラミックは、天然歯の光沢や色調、透明感を忠実に再現できますが、均一なアイボリー色のブロックを使うPEEK冠では、そのような仕上がりを実現できません。透明感を出しにくいジルコニアと比較した場合もPEEK冠は見た目・デザインの観点で劣ります。ですから、PEEK冠は保険で使える白い歯ではあるものの、あくまで最低限の処置であることも忘れないことが大切といえます。

 

PEEK冠の口コミと評判

PEEK冠の口コミと評判

PEEK冠に保険が適用されるようになったことは、世間的にも大きな話題となりました。近年は、銀歯による金属アレルギーのリスクや虫歯が再発しやすい点などが広く知られるようになり、奥歯もできれば白い歯で治療したいという人が増えている中での保険収載だったので、患者さんからは喜びの声も聞かれます。同時に、戸惑いや後悔の声も聞こえてきます。

 

例えばPEEK冠を7番に入れた患者さんは「思っていたよりもグレーで目立ちやすく、口を開けるのが恥ずかしい」といった感想を持たれています。その一方で、銀歯が外れてPEEK冠に交換した患者さんは「これで見た目も良くなったし、金属アレルギーの心配もなくなって良かった」と大満足されています。

 

このようにPEEK冠が保険適用され、実際に治療を受ける患者さんが増えてくると、良い評価と悪い評価に分かれる傾向が見て取れます。これは患者さんがPEEK冠に対してどのような期待を抱いていいたかが関係しています。「とにかく銀歯よりは良い被せ物を入れたい」という最低限の期待を抱いていた患者さんはPEEK冠に対して高い評価を下し、それ以上の期待を抱いていた患者さんは、思っていたものと少し違ったと低い評価を下す傾向にあるようです。

 

まとめ

 

このように、PEEK冠の保険適用によって、すべての部位を白い被せ物で安く治療できるようになりました。これは被せ物治療において、経済面を第一に考えている方にとっては極めて大きな改定となります。ただし、本文でもお伝えした通り、PEEK冠や従来のCAD/CAM冠はあくまでプラスチック素材であるため、自由診療のセラミッククラウンと比較すると、審美面・機能面・耐久面において劣るといわざるを得えないのが現実です。

 

奥歯の被せ物治療を検討する際には、その点も踏まえる必要があるといえます。